カザフスタンのドンブラをはじめとした様々な楽器の演奏が飛び出しました。奥様のイナーラさんは国立民族楽器オーケストラで10年以上ドンブラ奏者として活躍されたドンブラの名手。とってもシンプルな作りの楽器から、どうしてこれほど、と思うような豊かな音色が紡ぎ出されます。流れるような美しい指つかいにも目を奪われます。
カザフ人は15世紀以降中央アジアの最大勢力となった遊牧騎馬民族で、カザフスタン共和国を中心に中国、モンゴル、ロシアにも多く居住している。現在のカザフスタンはソ連の解体に伴い1991年に独立した国家で、世界第9位の広大な国土(約270万㎢)に豊富な鉱物資源を持つ。特に石油やウランの産出国として経済発展が目覚しい。またバイコヌール宇宙基地が所在するほか、セミパラチンスク市近郊など旧ソ連の核実験場があったことでも知られる。
カザフ人は古来ドンブラを愛好し、現在でも民族文化のシンボルの一つとなっている。ドンブラの演奏はカザフ人の思索の表現であり、その音色は言葉以上に弾く人の思いを伝えるものとされ、「真のカザフはドンブラ」という格言もある。普及率も高く、大概の家庭にドンブラが見られるほどである。この20年は民族と国家のアイデンティティが強く求められる中で文芸復興が進み、かつてはシャーマンの祭具であった弓奏楽器コブズ、箏ジェティゲンなどの演奏家も増えている。カザフの音楽は古典の継承だけでなく、演奏者によって常に新しい表現が模索されており、伝承曲の現代的な解釈や、民謡のポップスアレンジなども一般に親しまれている。
カザフのドンブラ
カザフ音楽を代表する爪弾く楽器。大別してマンドリンのような丸い胴と舟形の角ばった胴の2種類があり、細く長いネックに2 本の弦を張る。モンゴル~シベリア~イランまで近縁の2弦の楽器が広く分布する中、カザフのドンブラは独奏曲が高度に発達しており、採譜された伝承曲だけでも数千を数える。また民謡や叙事詩語り、即興詩の朗誦など歌謡の伴奏にも欠かせない楽器である。なお2014年にはドンブラの演奏技術がユネスコの世界遺産に登録された。
イナーラ・セリクパエヴァ
カザフスタン共和国 首都アスタナ市出身。
同市の国立民族楽器オーケストラで、ドンブラ奏者として10年以上にわたり活躍。
同国を訪問した国賓の歓迎式典などに多数参加。
’09年から拠点を日本に移し、関西を中心にコンサートなどで活動中。
https://www.youtube.com/watch?v=d7RVLkgnwqI
https://www.youtube.com/watch?v=ZgCJzRcD5Cs
高橋直己: 中央アジア遊牧文化圏の民謡研究者。
2002年よりカザフスタンへ渡り、伝統音楽を学ぶ。
2005年より歌手N.ジャンペイソフ(カザフスタン共和国文化功労叙勲者)にカザフ民謡を師事し、
2006年には同国にてプロクラスの歌手コンクールで第1席入賞を果たす。
09年よりイナーラ・セリクパエヴァのサポートを務める。
先週の世界音楽紀行は、「カザフスタン音楽」のコンサートが開催されました。
暑い中遠くから近くから、お越しいただきありがとうございました!
ドンブラという楽器のほか、口琴や歌など音とリズムで魅せる演奏でした。
高橋さんの普段のお話をする声とは打って変わり、大胆で力強い歌声と、イナーラさんの演奏中の滑らかで素早い指の動きにつられて、小さなお子様が立ち上がって踊りながら真似をしていたのが印象的でした。
楽器との出会いやお2人の出会いのエピソード、文化についてのお話なども興味深く、楽しいひとときを過ごさせていただきました。
ありがとうございました。
本日の世界音楽紀行は、カザフスタンの音楽!福井からはるばる来てくださった高橋さんとイナーラさんに会いに、ウズベキスタン音楽のましゅうちゃんや、次回出演のネパール音楽のバンチャパリワールの皆さん、アフガニスタン音楽のちゃるぱーさ一家といった音楽ファミリーをはじめ、今回もたくさんの方々がいらしてくださいました!
掌が、指先が、弦の上で白鳥のごとく美しく舞うドンブラ演奏にぎゅんぎゅん惹きつけられました。たった2弦なのになんと芳醇な。高橋さんの歌声、謎の楽器の謎の演奏技法にも度肝を抜かれました。ケーブルテレビ(J-com千葉 放送は15日の夕方のニュースだそうです)の取材もありました。高橋さん、イナーラさん、素晴らしい演奏をありがとうございました!
(寺原百合子 当日のFacebook記事より)