11月25日は大阪在住のリュート奏者高本一郎さんにご出演いただきました。繊細で夢見るような音色のリュートですが、これまでに登場したウードや薩摩琵琶と形が似ていて楽器を通じて世界の繋がりを感じることができました。
ルネサンス時代に「楽器の女王」と称えられ、当時のヨーロッパの人々に最も愛された楽器『リュート』。美しく魅力的なフォルムは文学作品の中でオルフェウスの伝説的楽器となり、絵画や彫刻さらに詩などの題材として、多くの芸術家達によって彼等の作品の中に残されています。その柔らかな音色から「天使の楽器」と讃えられました。
リュートという名は、アラビア語で「木」を意味する「アル・ウード」 (ar`ud)から由来する楽器『ウード』が語源であるといわれています。
北アフリカのモロッコやエジプト・トルコ・イランなどの国々で今なお愛されているウードは古代ペルシャ時代に中央アジアで弾かれていた「バルバット」と呼ばれる絃楽器がそのルーツでは? といわれています。
それがシルクロードを渡って中国のピパや日本の琵琶になり、それとは逆にアラビア半島および地中海沿岸に伝わってウード、さらにイベリア半島を経てリュートへと継承されていきます。
中世・ルネサンス時代には、リュートはソロや他の楽器とのアンサンブルでの演奏はもとより、人間の声の最も理想的なパートナーとして歌の伴奏に用いられました。
幅広い感情や微妙なニュアンスを表現力豊かに奏でられる万能な楽器として、その後バロック時代が終焉を迎えるまでのヨーロッパほぼ全土において、あらゆるシチュエーションで人々にたいそうもてはやされたのです。
婚礼や舞踏会をはじめとする宮廷での祝宴、野外での農民達の祝祭などはまさにリュート音楽の檜舞台でした。
シェークスピアが活躍した英国のエリザベス王朝の宮廷では、詩が書けて歌をうたえてリュートが弾けることが紳士の条件であり、またある貴族は思い焦がれる貴婦人の気を惹こうとリュートを爪弾く。
かのエリザベス女王1世は、眠れぬ夜などにお抱えのリュート奏者の防ぎ出す繊細優美な音色によって眠りについたといわれています。
肉体を癒し、精神を沈静させる効果や、魔法の媚薬としての効能を、リュートの音色に求めたという逸話も残されています。
しかしながら、当時のリュートはその維持費がとても高価なものとしても知られており (リュート1挺、馬1頭 といわれていたようです)、それが弦の増加に伴う調弦および演奏の難しさとあわせて、次第に音楽史のなかから消えていった要因となったのかもしれません。
CD『天使のアリア 風の舞曲』ライナーノートより ( 高本一郎 )
高本 一郎 たかもと いちろう
リュート&アーリー・ギター奏者
幼少よりギターを始め『読売ギターコンクール銀賞』など国内の数多くのコンクールに入賞。
相愛大学音楽学部・音楽学専攻を卒業後、フランス国立ストラスブール音楽院にて研鑽を積み、ソロ活動、国内外の著名な音楽家との共演をはじめヨーロッパ、アジア、オセアニア各国でコンサートを開く。
「プロヴァンス音楽祭’01」での演奏はフランス全土にTV放送された。
TV、ラジオ、CM音楽制作、演劇、バレエ、能狂言、講談、朗読の舞台、CD録音に参加するなど全国各地で多彩な演奏活動を展開中。
2007年冬、フィレンツィエ、バルセローナにて公演予定。
「日本テレマン協会」ソリスト&通奏低音奏者、「ダンスリー」メンバー。
大阪音楽大学付属音楽院講師。世界クルーズ船『飛鳥』のショー音楽を担当。
2001年1stCD『天使のアリア、風の舞曲』をリリース。その後多数のCDをリリースしている。
11月25日(土)世界音楽紀行♪ Vol.17リュートの響き (Gyallery Oasis フェイスブックページより)
25日に行われたリュートの様子をご報告致します!
今回も沢山のお客様にご来場いただき、感謝いたします。
リュート奏者の高本一郎さん、素敵な演奏をありがとうございました。
リュートという中世古楽の珍しい楽器と、奏でられる厳かな音色に皆さん釘付けでした。上品で繊細な音とシリアスな不協和音が印象的で、私達も宮廷に誘われるようでした。
以下、いつも来て下さるMさんからのご感想です。
世界音楽紀行♪世界音楽聴こう♪初めてのリュート。うっとりする美しい音色。静な湖面に、投げられた石。波の輪が周囲に広がっていくように、私の体に投げられた音は、体に広がるリュートの波紋。弦の奏でる世界が、ギャラリーの空気に溶けていくような幻想的なひとときでした。なんだろう?哀愁と暖かさ。重みと軽やかさ。静けさと快活さ。かけ離れていることがひとつに聴こえる不思議さ。お上品な関西トークで、会場は笑いの波紋が。。。「青い月」は波と風の流れを肌に感じる瞬間でした。大人の音楽を楽しませていただきました☆
Mさんありがとうございました!
次回は世界音楽紀行♪Vol.18琉球のうたの感想を掲載致します。