繊細な弦の音色に魅せられるひととき

アメリカからやって来た日系カナダ人サロード奏者スティーブ・オダさんとタブラ奏者池田絢子さんによる北インド古典音楽の演奏は、かわいい小鳥たちに見守られて開催されました。ゆったりとした悠久の調べに身をゆだねる、ぜいたくなひとときとなりました。

北インド古典音楽について

 北インド古典音楽の起源は古く、声明のルーツであるヴェーダの詠唱がはじまりと言われていますが、現在のような壮大な音楽大系が形作られたのは今から約400年程前。ペルシャ文化との融合により、マハラジャやムガル皇帝たちの宮殿で華ひらいた宮廷音楽です。ヒンドゥーの神々へ捧げられる宗教的で数学的な南インドの音楽とは対照的に、王たちを癒し、眠りを包みこんできた北インドの音楽は、より叙情的で官能的な演奏を特徴とします。優れた楽師を抱えることはマハラジャ達の権威を示す贅沢な趣味でもありました。

 

 

 インド音楽は季節や気候、演奏される時間帯によって使うべき音の動きが決まっていたり、一定のリズムサイクルの中で複雑な分割を遊んだりと、通な聴きどころが多く、通常演奏時間は1曲が30分から1時間に及ぶこともあります。ゆったりと瞑想的に始まり、途中からタブラのリズムが加わり徐々に加速して、最後は熱狂的なクライマックスを迎えます。後半の旋律奏者とリズム奏者の即興的な掛け合いはとてもスリリングです。

Profile

スティーブ・オダ Steve Oda
http://steveoda.com/

 

サロード奏者。カナダ生まれの日系3世。7才からジャズギターを学ぶ。71年Ud.アーシシ・カーンに師事。73 年からアーシシの父であり伝説的 な音楽家Ud.アリアクバル・カーンに師事。98 年より2年間アリ・アクバル音楽大学のエグゼクティブ・プロデューサーとして勤務。アリ・アクバル・カーンを彷彿とさせる繊細で叙情的なサロードは世界中の音楽ファンを魅了している。米サンラファエル在住。2007年に初来日。以降ほぼ毎年来日し、インド音楽と舞踊の祭典サンギートメーラやIndian Classics Tokyoなどのコンサートに出演。2014年に寺原太郎とともに、念願だった祖父の生まれ故郷の瀬戸内海の島をはじめて訪ね、祖先の祀られている島の菩提寺で奉納演奏を行った。
(旅の記録 https://sashima2014.jimdo.com/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

池田 絢子 Ayako Ikeda

http://ayako0109.wixsite.com/ayako-ikeda/

 

打楽器を村松達之氏、タブラを U-zhaan、Pt.Anindo Chatterjee、Anubrata Chatterjee各氏に学ぶ。

東京暮らし。

毎年冬三ヶ月間、カルカッタ暮らし。

インド古典音楽の他にも様々なジャンルのミュージシャンと共演し、精力的に演奏活動中。

柳原陽一郎、minakumari、YAMPKOLTのレコーディングに参加。

町田『万象房』タブラ教室、西荻窪タブラ倶楽部講師。

 

 


Impressions

Gallery Oasis Presents
インド古典音楽コンサート      オアシスレポーター

 

今回はアメリカからやって来た日系カナダ人サロード奏者スティーブ・オダさんとタブラ奏者池田絢子さんによる北インド古典音楽の演奏でした。ちょうど木とり展がギャラリーで開催されている時で、小鳥たちもこの音楽を楽しんでいるようでした。奏者のスティーブ・オダさんは、寺原太郎さんの解説によると一見都賀の駅前辺りにいるおじさんのようだけれど、実は日系カナダ人で日本語を悲しい歴史の中でしゃべれなくて、英語での通訳を通してのお話しでした。
 インドのマハラジャたちを癒し、その権威を示す贅沢な趣味でもあった音楽は、眠りに包み込むような不思議な世界の音楽でした。午後のひととき、奏者の「眠ってしまってもかまいません。」の言葉に眠りの世界に入っていかれた方も多々おられました。このゆったりとした眠気を誘う演奏から、池田絢子さんのタブラのリズムが加わってだんだんとリズミカルなコラボレーションになっていきます。このコラボがとても楽しかったです。世界は広いなぁと思わされた演奏会でした。